「オブリコーン」とは、スピーカーの振動板の形状を非対称にすることで共振を分散させ、高域特性に現れるピークを軽減する技術です。高域共振を平滑化することで聴感上の付帯音、共振音が軽減され、より自然な再生音を得ることができます。1997年のSX-V1X以来、ほとんどのHi-Fiコンポーネントスピーカーシステムに採用している他、システムオーディオ、カーAV、テレビにも採用しています。この技術によって、高域特性に現れるピークを軽減し、より自然な再生音を得ることができるようになりました。
通常のスピーカーはボイスコイル位置が振動板の中心にあるため、共振周波数が一点に集中し、高域共振のピークが大きくなります(アルミニウムなどの内部損失の小さな材質ではより顕著になります)。オブリコーンでは振動板を駆動するボイスコイル位置を中心からずらし、中心から外周までの距離が変わるようにしています。その結果、高域共振を分散して周波数特性を平坦にすることができました。
振動板形状を非対称にして高域共振の分散を図るという考え方は以前からありました。ただ、振動板が横ぶれを起こして異常音の原因になることが問題となり、量産化はできませんでした。ビクターでは振動板にバランサーを装着してダイナミックバランスを取ることで量産化に成功(下図)。ダイナミックバランスの取り方、偏心の度合いなどを音質、特性面で最善になるように調整しています。
振動板に採用する素材の違いによって、再生される音色は異なります。アルミニウムでは金属的な音、パルプではざらついた音に感じられることがありますが、その最も大きな原因が高域共振のピークの影響です。オブリコーンの音質は素材固有の付帯音・共振音が少なく、楽器の音質を非常に自然に再現します。また、共振音があると他の音をマスキングし音情報が損なわれてしまうのですが、オブリコーンは微小レベルの情報量が損なわれないため、音場空間の表現力や演奏の細かなニュアンスの再現性に優れたクリアで歪感の少ない音質を持っています。
オブリコーンは指向特性に偏りを持っており、その特長を生かしたスピーカーも商品化しています。オブリーク・オムニアレイ方式スピーカー(SX−LC33MkU、SX−LT55MkU)では上下方向の放射特性を改善(図)。プラズマテレビ、カーコンポなど正面にスピーカーが設置できない時、オブリコーンの指向特性を利用して音像定位を明瞭にしています。