PWM変調信号生成回路では、デジタルのフィードバックが行われ高精度な PWM信号を生成します(マスタークロック周波数 : 400 kHz)。これにより、スイッチングパワー段で増幅され、ローパスフィルタ( LPF )で復調されて出力される信号は、ほぼ実用的な音質になりますが、さらにアナログのフィードバックを行うことにより、より高音質なオーディオ特性に仕上がります。フィードバックのループ特性は2ポール補償型で、LPF のカットオフ周波数はループの帯域内に設定しています。このように、「小型」「軽量」「高効率」は“デジタル”で、「高音質オーディオ特性」は“アナログ”で実現させる基本回路構成と、デジタルとアナログのフィードバック協調動作(ハイブリッド)によって高音質化を図る技術が実現した「ハイブリッド・フィードバック・デジタルアンプ」となっています。
「ハイブリッド・フィードバック」技術により、高精度 PWM変調※信号生成には「デジタルのフィードバック」、スピーカー出力端子からは「アナログのフィードバック」という 2 種類のフィードバックを協調動作させることで、「小型」「軽量」「高効率」というデジタルのメリットと、スピーカーへのアナログ出力を高音質化するアナログのメリットを同時に得ることができ、高音質のデジタルアンプが実現しました。
※ Pulse Width Modulation 変調 : 信号によってパルスの幅を変化させる変調方法。
PWM 変調回路にはさまざまな方式がありますが、多チャンネルにしても相互干渉がなく、同期動作が可能でスイッチングパワー段から直接フィードバックさせる高精度PWM変調回路を実現しました。 400 kHz のマスタークロックを基準とし得られた高精度PWM 信号をスイッチングパワー段で増幅、その出力をデジタルフィードバックすることにより、低ひずみ・高音質の PWM 出力が得られます。
デジタルアンプでは、上下のパワー素子が交互に高速でON/OFFを繰り返して出力します。この結果得られる出力信号は、L1,C1によるLPF(ローパスフィルタ)を通すことによってオーディオ信号として復調され、スピーカへの出力となります。しかし、パワー素子は単なるスイッチとして動作するため、信号レベルは電源電圧とパルス幅で決まりますので、どちらが変動しても誤差となり歪みやノイズとなります。これは、従来のアナログアンプの出力特性との大きな相違点であり、特に、電源電圧変動や電源ノイズがそのまま出力されるという基本特性から電源電圧変動除去比(PSRR=0dB)を40〜60dB改善する必要があります。また、LPFでも信号が通過するインダクタを小型化するために磁性材料によるコアを入れると、許容範囲を越えるレベルの磁気歪みが発生します。さらに、ダンピングファクタについては、LPFのインピーダンス、パワー素子のON抵抗に加え電源の出力インピーダンスまでが関係してきます。これも注意を要する基本特性です。
ノイズも電圧変動もゼロの「理想電源」やON抵抗ゼロの「理想パワー素子」を得るのは、現実的に無理があることから、実用になるオーディオ特性を得る手段として、フィードバックシステムを効果的に用いることになります。一般的に、LPFの後からフィードバックをおこなうことは、困難とされていますが、従来のハイエンド・高性能NFBアンプで応用されてきた2ポール補償型NFBのループ特性にすることで、極めて効果的で安定なNFB回路とすることができます。この結果、電源電圧変動除去比はもちろん、歪率やS/N比など基本的なオーディオ特性を40〜60dB改善することができ、ハイエンド・オーディオアンプとして十分に通用する高音質オーディオ特性に仕上げることができます。