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技術情報

技術者インタビュー

技術者インタビュー〜D-ILA編(デバイス)〜
ILA事業グループ デバイス技術部 技師 井澤 俊輔

ビクター・JVCが独自開発した反射型液晶デバイス「D-ILA」。
1992年の初期開発より、プロジェクター用マイクロデバイスとして高輝度と高精細を追求してきました。
そして2006年、「D-ILA」は新開発フルハイビジョンデバイスとして、圧倒的な映像表現を実現。最新機種「DLA-HD100」では、業界最高※となるネイティブコントラスト30,000:1を可能にしています。

「D-ILA」の新たな技術革新について、開発に携わったILA事業グループ井澤 俊輔に話を聞きました。
(このインタビューは2008年2月に行ったものです)

※2007年9月26日現在 当社調べ。


●D-ILA素子についてわかりやすく説明してください。

ガラス基板とLSI基板(シリコン)の間に液晶を挟んだ構造で、LSI基板では画面の解像度に応じて画素(反射電極)がきってあります。画面解像度は、画素数の小さいXGAから最大では4Kx2Kの高精細まで揃っています。また、DLA-HD1およびHD100といった民生のフロントプロジェクターでは、画素が1920x1080のフルHDを実現しています。
「D-ILA」はLCOS方式を採用していますが、その他にはTFT方式、DLP方式などがあります。LCOS方式は原理的に半導体プロセスの限界まで高精細化可能であり、小型化可能なデバイスとしても期待されています。


●LCOS方式はじめD-ILAの特長を教えてください。

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LSI基板のトランジスタ回路が画素の下層に配線される構造になっています。通常、画素と画素の間には通電しない隙間の部分があり、この隙間が見えてしまうのですが、「D-ILA」ではこの隙間を限界まで狭めることができます。これによって、画素のつなぎ目が見え難く、なめらかな表現が可能な“シルキーな画像”を作ることができます。
この「D-ILA」デバイスを駆動する方式には、アナログ方式とデジタル方式のアプローチがあります。これまでフロントプロジェクターではアナログ駆動のデバイスを主としていましたが、今回はデジタル駆動を採用しました。どちらもディスプレイデバイスとしては一長一短があるのですが、今回は一般的に再現性に優れるが階調表現等は難しいと言われたデジタル方式にさまざまな工夫を施し、全てにおいてバランスの良いデバイスを実現することができました。


●新しい素子(デバイス)は従来と何が違うのですか?

大きな特徴としては、デバイスのコントラスト比が劇的に改善されています。この高いコントラスト比のポイントは、輝度の向上と漏れ光の低減にあります。輝度の向上は、絶縁膜を用いて画素間の隙間を埋め、画素間での凹部をできるだけ平坦化(高反射率化)することで実現しています。これは一方で、光の散乱や回折を低減する効果もかねており、黒色をより黒くする“高精細化“にも大きな効果を発揮しています。また、漏れ光の低減には偏光状態の制御が最も重要となります。デバイス設計において、光学・液晶シミュレーションと実験を繰り返しながら検証を進めた結果、デバイス内でわずかに偏光状態を変化させる要因が明らかとなっていきました。最終的に、理想的な液晶の振る舞いと平坦化の技術が融合することで、ネイティブコントラスト30000:1という驚異的な値を達成した商品を開発することが出来ました。
また、本デバイスでは狭セルギャップ化による高速応答や、従来のD-ILA無機配向技術にさらなる改善を加えることで高い信頼性と長寿命化も実現しています。


●素子を開発するうえでの課題は何でしたか?

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コントラストが向上したことによる副作用ですね。内容はさまざまありますが、特に黒の均一性を確保することが難しかったです。例えばコントラスト5000:1の世界では画面全体が同じ「黒」に見えても、30000:1の世界になるとその様子が一変します。連日、深夜まで試行錯誤した結果、デバイスにかかる応力の緩和や放熱方法の工夫でこの問題を解決することができました。
また、わずかなプロセス条件のズレが大幅なコントラスト低下に繋がってしまう点も課題でした。画素間の平坦性や液晶の配向、セルの厚みなど全てのパラメータが合致しなければコントラストの確保が難しいのです。これらの問題を解決するために、LCOS量産メーカーとして長年培った「ものづくり力」の様々なノウハウを注ぎ込み、結果的に安定した生産を可能としました。


●そのほか苦労した点はどこですか?

具体的に苦労したことは、とにかくシミュレーションと実験をひたすら繰り返して、多くのアイデアを試したことですね。特にコントラストの向上には一つ一つの要素の積み上げが重要でした。開発は、そういった課題の解決に向けた体力勝負そのものです。今回は多くの開発テーマを抱えながらでしたので、時間に追われて毎日大変だったという印象が強いですね。また、むしろ苦労とは逆のことなのですが、通常は部門ごとに意見の相違があるのが普通なのに、今回の開発に関して言えば全員がひとつの目標に向かって邁進したように感じています。個々の総合力とこれまでのノウハウが見事に発揮されたデバイスになっています。


●最後に一言

今回の開発により、私自身も「D-ILA」デバイスの秘められた可能性を垣間見ることができました。しかし、今後もまだ改善の余地は残されており、そういった大きな課題を克服するたびに理想的なディスプレイデバイスに近づいていくと思います。そしていつの日か「もうこれ以上の素晴らしいデバイスはできない、どうか皆さん見てください」という嬉しい悲鳴をあげさせたいと思っています。


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