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Victor・JVC /The Perfect Experience
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技術情報

技術者インタビュー

技術者インタビュー〜K2テクノロジー〜
K2ラボラトリー 所長 桑岡 俊治

ビクター・JVCの強みであるソフトとハードの融合技術。その象徴であるK2テクノロジーは、デジタル音源における当社独自の高音質化技術として、現在多くのレコーディングスタジオやマスタリングスタジオ、再生機器に採用されています。また、現在では音楽配信などの圧縮音源についても高音質化を実現し、メディアの形態にとらわれない高品位な音楽提供の場を広げています。このK2テクノロジーの開発に携わったK2ラボラトリー 所長 桑岡 俊治にインタビューしました。
(このインタビューは2005年7月に行ったものですが、2008年3月現在での新たなコメントを追加しています。)


●K2テクノロジーについてわかりやすく説明してください。

簡単に言うとデジタル信号の歪みを排除し高音質化を図る技術がK2テクノロジーです。この技術はデジタル信号の伝送過程やメディアの変化による音質劣化を排除することで、品質を安定させ、音質を向上させることができるのです。 現在、多くのレコーディングスタジオや、業務用・家庭用のオーディオ製品に広く使われており、またディスクのカッティング工程でもこの技術は活かされています。


●開発の経緯を教えてください。

1985年、ビクタースタジオのエンジニアが「使用する機材・テープによって、デジタルコピーした音質が変化している。なぜだ」と気付いたところから始まります。「デジタルは、符号を正確に伝送すれば音質は変わらない」というのが常識でしたが、デジタルテープや機材を換えると明らかに音質が変化するのです。 その疑問を解明するため、スタジオエンジニアをはじめとした方々と協力し、さまざまな試行錯誤の末に、デジタル信号を波形で伝送する際に付加される符号外成分(ジッターやリップルなど)が音楽信号に大きな影響を与えていることをつきとめました。そして、厄介な符号外成分を根本から解消するデジタル伝送の革新技術である「K2テクノロジー」が開発されたのです。 この技術によって、伝送過程やメディアの変化による音質劣化を排除し、品質の安定を確保することができるようになりました。


●苦労した点はどこですか?

開発当初は苦労の連続でした。
K2テクノロジーの開発にあたってはビクタースタジオの応接室を専用の開発実験室として貸してもらっていたのですが、開発が進むにつれて、どうしても生音が必要になってきました。
スタジオの応接室を借りているとはいえ、本番録音中のレコーディングスタジオに入ることは許されなかったので、実験することができず困っていました。
そこで、以前別件の共同開発で仕事を一緒にしたテレビ局の知り合いに、怒鳴られるのを承知で、音楽番組を生放送しているスタジオで実験をさせて欲しいと頼みにいきました。結果は予想通り怒鳴られました(笑)。
ところが、しばらく思案した後、その知り合いが急に椅子から立ちあがり「俺について来い」とスタジオまで連れて行ってくれたんです。
そして、生放送前のリハーサルが慌ただしく行われているなか、番組の責任者に「何かあったら俺が責任を取るからこの男に好きにやらせてくれ。」と頼んでくれました。彼は「その代わり世界一の音を創れ!」と励ましの言葉をかけてくれた後、スタジオを出ていきました。
その後ろ姿を見ながら目頭が熱くなったのを覚えています。
苦労は苦労なのですが、何事にも真剣に取り組む姿勢があれば社外にも協力者は生まれるのだと思いました。そういった色々な人たちに助けられて、技術開発ができたのだと思います。


●試作段階でもかなり苦労したとお聞きしましたが?

原案スケッチを基に試作機ができたので、スタジオエンジニアが見守るなかで試聴を行ったのですが、出てきた音は「何だこの音は?!」。
試作機は音質向上どころか逆にノイズを付加するエフェクターのようでエンジニアの顔が期待から失望に変わったのを感じました。ここから再度デジタルの音質変化の原因解明に向けての挑戦がはじまりました。資金も乏しく満足な部品も購入できないなか、全て工夫してやるしかなく、試行錯誤の連続でした。電源部分や伝送部分が原因かと思い様々なアイデアを具現化し、試してみてはつぶすという日々に明け暮れていました。何をやっても音が違うので、まるで「音の地獄」をさまよっているようでした。


●何がきっかけでデジタルの中の歪みを見つけたのですか?

ある日、実験のためにジュースのストローに光ファイバーチューブを入れ、その端に発光ダイオードとフォトトランジスターを組み合わせて作った伝送素子が音楽のレベルに応じて光が強弱しているのをぼんやり眺めていたときです。
いつもは綺麗だなとしか思っていなかったんですが、ハッと脳裏に閃いたんです。
デジタルデータに合わせてストローが音楽を奏でている。デジタルなのにアナログだ!
デジタル信号の波形は実はアナログなんです。だからデジタル信号の符号情報は同一であっても状態によってはアナログ波形の方は変化する。デジタル信号の中に未知の歪みを発見した瞬間でした。 DAC(デジタル信号をアナログ信号に変換する回路)を中心に周辺を完全分離し、一定にしたつもりが、実際にはデジタル信号の符号情報に重畳して入力されていました。これを排除するために全く新しい回路の開発へ挑戦し、K2テクノロジー誕生へと繋がっていきました。


●K2テクノロジーの強みはなんですか?

ハード・ソフト・メディアと3事業にまたがり、それぞれに展開できるビクターならではの高音質化技術であるということが一番の強みではないでしょうか。
「K2テクノロジー」は、1988年CDプレーヤーに搭載され商品化デビューを果たし、1993年にはビクターエンタテインメント制作のCD高音質化基本技術として採用され、その後1996年にはCDのさらなる高音質化を目指してディスク用技術としても採用されました。
また2000年には「K2テクノロジー」で培ったノウハウをベースに圧縮音楽データに対応した「CCコンバーター(現在は、K2テクノロジーに呼称を統一)」を開発し、デジタルネットワーク時代に対応した新技術として、AVアンプやモバイルPCなどに搭載しています。「K2テクノロジー」は毎年さらに進化するための開発が進められ、DVD高画質化・高音質化にもこの技術が活かされています。
さらに現在では、音楽配信などに利用されている圧縮音源の高音質化を実現する「netK2」テクノロジーを開発し、圧縮音源でもCDに匹敵する音の良さを実現しています。


●最後に一言

K2テクノロジーの開発にあたって、一人でできる仕事には限りがあると痛感しました。開発を進めていくなかで、スタジオエンジニアやディレクターと親交を深め、よき相談相手、協力者として開発に携わってもらいました。仲間作り、組織力が仕事を進める上でいかに重要であるか感じました。 そして「K2テクノロジー」は、ビクターがアナログ時代から取り組んできている『原音探求』を、デジタル音楽文化の中においても誠実に追求していこうとするするものです。音楽を楽しむ手段やメディアが時代とともに変化しても、音楽を作り出す人たちの意図や思いを、できるだけ歪みのない純粋な音を通して聞き手に届けたい、また聞いている人たちにも、そのピュアな音をもっともっと知ってほしいと思っているんです。「K2テクノロジー」が、世界中の多くの人々に、限りなくピュアな音と豊かな時間を提供する力になれるとうれしいですね。


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