インタビュー作品

「自分を見つめた作品のシナリオは、毎日書いている日記がベースでした」

作品名『つぶつぶのひび』
大木 千恵子さん(茨城県・24才) 作品時間:18分45秒
撮影時間:約10時間 編集時間:約6カ月 編集ソフト:Final Cut Pro

作品概要
時給850円、1日60万個作られる納豆工場でのバイト生活の私。何のために生活しているのか、退屈な日々は過ぎていく。そんな日常から少し脱出しようと思った。昔の友達との再会、パイロットとの出会いをきっかけに、私は自分の足元を再確認する。

●作品を作り終えた今の感想をお聞かせください
この作品を制作して良かったと思っています。というのは、自分が作った納豆を買っていく人の姿を見て、すごく嬉しかったんです。アルバイトで私がやっている仕事の意味を、発見することができましたから。

●というと、この題材を選んだ理由は何だったのですか?
納豆工場で、毎日毎日同じことの繰り返しの中「何でこんなことやっているんだろう」と、大量生産の中で自分の役割がわからなくなっていました。自分でやっているというより「やらされている」という気持ち。「このままじゃいけない」と思っていたんです。その気持ちが作品を作らせたのだと思います。

●自分を見つめる内容がテーマになっていますが、シナリオはどうやって制作したのですか?
簡単な日記を書いているんですが、その日記に描かれた自分の心理を元にシナリオを作成したんです。ですから、すぐに仕上げることができました。

●全編にわたって、心理描写をナレーションで行っていますが、以前にもこうした作品を作られたのですか?
私の作品は、こんなのが多いなと最近になって気づきました。自分の目で見て、感じたことをナレーションで伝える…そんな作品が今の私のスタイルなのかもしれません(笑)。

私は納豆工場でバイトをしている。ここに来て半年間、ごみ捨ては私の担当だ なんでこんなことやってんだろう。毎日こんなにつくっているけれど… 高校からの友人に会う。「人一倍気を使う仕事」「一般的にはいけないこと…」

●この作品づくりで、苦労した点は何ですか?
しいて挙げれば、やはりナレーションですね。部屋の近くにチャボの鳥小屋がありまして、録音するときは夜中なのに、その鳥が鳴くんです。何度も録り直しをさせられました。

● 逆に、この作品づくりで楽しかったことは?
飛行機に乗って飛んだことかな。空からの映像を撮るために、セスナに2回ほど乗って撮影しました。高いところから、下を見るのは楽しかったですよ。自分がアルバイトをしている工場がすごく小さいんです。その工場の自分の仕事場は、もっと小さく、そこで悩んでいた自分は、なんて小さいんだろうと思いました。

●タイトルの「つぶつぶのひび」は、どんな理由で付けたのですか?
タイトルを付けるのに好きなのは、漢字とカタカナの組み合わせなんです。今回も「納豆ムスメ」や「風俗嬢とパイロット」、「Re」など考えたんですが、かわいくてしっくりきたのはこのタイトルだったんです。

●最後にビデオ作品づくりの魅力はどんなところですか?
これまで十数本のビデオ作品を作ってきました。そうした作品を観てもらうと、何らかの感想が返ってきます。それを聞くのがすごく嬉しいんです。今回もTVFの Home ページで、作品を観た人がコメントを書いてくれるのは、何ものにも代えがたい喜びになりました。だから、やめられませんね。

成田空港へ行った。その夜、空を飛ぶ夢を見た 飛行機に乗った。
400mも高いところを飛びながら、見おろしてばかりいた
私がつくった納豆が売られていた。あの毎日はここにつながっていたんだ


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