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GY-HD100が開くデジタルシネマの可能性
【『Director's MAGAZINE』2005年12月号より(抜粋)】
撮影カメラマン:近藤龍人様
撮影カメラマン:近藤龍人様 今年4月のNAB2005で衝撃的ともいえるデビューを果たした、ハイエンドHDVカメラ「GY-HD100」。コンパクトなボディながらもレンズ交換を可能にし、720/24Pで撮影できるなど、シネマユースとしての機能を備えたカメラに、大きな注目が集まっている。今回は、日本映画界期待の若手カメラマン近藤龍人氏に、「GY-HD100」を試用していただき、デジタルシネマ制作の可能性を語っていただいた。
レンズ交換に感じる可能性
普段はほとんどフィルムカメラで撮影するという近藤氏。映画をビデオで撮るということに関して、どのように感じているのだろうか。
近藤: 「本格的にビデオで撮ったのは『くりいむレモン』が最初でした。これはもともとDVD用としてスタートしたからだったんです。僕は基本的にビデオカメラで映画を撮ることに関しては、違和感なくやっていけると思っています。ただこれは僕個人の問題なんですが、まだビデオ慣れしていないので、映し出されるモニタによって違う色を、どれを基準としてどう自分の中で判断していくか、そこが悩み所なんです。フィルムだったら現像して、試写室で見てそこで1つの基準が出るわけですが、ビデオの場合はその基準を撮影時に判断しなくちゃいけない。きちんとしたモニタで確認できる環境が整えば、ビデオでも自信を持って撮影できると思います」
 
  では実際にGY-HD100を使用し、どのように感じたのであろうか。
近藤: 「一番気に入ったのは、この価格帯でありながらレンズ交換ができることです。カメラマウントは1/3なんですが、1/2へのマウントコンバータがありますし、シネレンズアダプターも使えます。この点で非常に可能性を感じます。もうちょっとこうしたいと思えるだけのポテンシャルを持っているんです。そういったアクセサリーを使っていろんなことに挑戦していきたいカメラですね」
 
  GY-HD100は、720/24Pのほか同30Pでも撮影可能だ。フィルムでも映画は24コマだが、CFなどテレビ用途では30コマで撮影する。そういった意味では、フィルムで撮影してきた現場にもなじみやすい。
近藤: 「僕は24Pよりも30Pで、1/100ぐらいにシャッターを切ったほうが好きですね。実はビデオカメラを使うとき、あんまりフィルムに近づけようとは思っていません。フィルムにはそれぞれ特徴があるんですが、ビデオカメラにもそれぞれ特徴があって、それを使い分けることによって選択の幅が広がると思っています」
 
  フィルムカメラとビデオカメラのもっとも違う点は、被写界深度とフィルム固有の粒子感であろう。この点について近藤氏は、こんなふうに語ってくれた。
近藤: 「本当に深度が必要な場合は、それこそ35ミリとかを使えばいいと思っています。ビデオ撮影となった場合は、それよりも別の可能性を追求したほうが自然ですよね。粒子感については、ビデオでやられている人はすごくこだわりがあるようなんですが、僕らはあまり意識したことはないんですよね。それよりも上映するときに、フィルムならコマの間に黒が入りますよね。でもビデオではプロジェクターを使ってもそういうことがないので、世界観がもう全然別のものだと思っています。」
撮影カメラマン:近藤龍人様
HDVで広がるデジタルシネマの可能性
2〜3年ほど前から業務用のビデオカメラでは、シネマライクなガンマカーブを備えるといったアプローチが増えている。現実に、これまでビデオで作品を撮ってきた監督やカメラマンからは、シネマライクなガンマに対する評価は高い。GY-HD100ではシネマライクガンマはもちろんのこと、ブラックストレッチ/コンプレスやニーポイントの変更、色に関してはカラーマトリックスやスキントーンディテールの調整など、かなり細かい設定が可能になっている。
近藤: 「カメラの設定を変えることで表現の度合いが広がるというのは、よくわかります。ここまで細かいと現場での判断はなかなか難しいでしょうが、撮影前の準備段階でいろいろ試していれば、現場でも狙い通りのところに持っていけるでしょう。また自分の気に入った設定をSDカードに記録できるのも、すごくいいですね。このカメラを使い込んでいて、モニタまかせじゃなく経験で見た目との差を補完できるまでになったら、かなり強力です。実際にカメラマンのみなさんも、そこが楽しくてやっている人が多いんじゃないでしょうか」
   
  フィルムでの制作に比べて、ビデオ制作では大幅なコストダウンが見込める。この点で、より映画が作りやすくなる状況になるのだろうか。
近藤: 「もちろんそれはあると思います。ただあまり作品がたくさんになりすぎてもハコ(映画館)のキャパシティもありますので、せっかく作っても公開まで1年以上も待たされるといった状況になるのであれば、それはあまりいいこととは言えないですね(笑)」
   
  フィルム撮影に比べてビデオ撮影では、その場でシューティングした映像が確認できるというのもメリットだが、映画の現場はこれによって変化するのだろうか。
近藤: 「僕の現場では、ビデオで撮ってもあまりモニタチェックはしないんです。そのほうが現場の集中力が上がるんですね。ですから、チェックできるから現場が変わるということはないんじゃないかと思います。ただビデオでは撮影から編集までのスピードが格段に上がりますから、それはすごいことですね」
   
  集中力という点で、近藤氏はフィルムの人ならではの面白い話をしてくれた。
近藤: 「これまでビデオで撮るときは、テレ端でつい手ぶれ補正を入れてしまってたんです。変な話ですが、このカメラは逆にそれ(手ぶれ補正)がないのがいいですね。撮影していてもそれだけ緊張感があります。撮影ってテンションが大事なんです。僕らは学生の頃からフィルムの大きなカメラを扱ってきましたが、その大がかりさ、不便さゆえに、役者さんも自分たちも気を張らなきゃいけない。ビデオはコンパクトだし、コストパフォーマンスもいいから手軽だと思ってしまったら、きっとダメなんだろうと思います」
   
  実際に機材から教えられるというのは、映像の仕事ではたくさんある。便利だからそのぶんいいものができるわけではない。不便なものでやって、基礎を固めるというプロセスはどんな仕事でも重要だ、と近藤氏は言う。実際に映画は、膨大な手間と労力を必要とする。だからこそ並みの熱意では続かない。本当に映画が好きか、自分にとってどれだけ大切か、最終的にはそこが重要になってくる。最後にこれからの近藤氏の目標をうかがった。
近藤: 「僕らは大阪から、大学時代の仲間たちと制作チームのような形で東京に出てきたわけなんです。お互いがわかっているからこそ、一緒にやってきたし、やれる現場もあると思うのですが、いまはそれぞれ別の現場で新しい人たちと仕事をしています。そこではちゃんと自分のやりたいことや目指しているところを、人に説明できなければならない。そういうところは多くの現場に入ってみて学んだことですね。そしてまたいつか、大阪芸大出身の仲間と一緒にできる日のために、自分のスキルを上げてみんなを驚かせたいです」
   
  映画に限らず、VシネやPVなどにもどん欲にチャレンジする近藤氏。GY-HD100のようなフレキシブルなカメラの存在は、近藤氏のような新世代のクリエイターにとって強力な武器となるはずだ。
近藤カメラマンが実際に撮影したGY-HD100の映像


■近藤龍人(こんどう・りゅうと)氏プロフィール:
1976年愛知県生まれ。1995年大阪芸術大学映像学科に進み、山下敦弘監督ら同期のメンバーと短編をはじめ多くの作品を制作する。高い評価を得た代表作品、「ばかのハコ船」(02)、「リアリズムの宿」(03)、「くりいむレモン」(04)などで撮影監督をつとめ、山下監督作品には欠かせない存在。また今夏劇場公開され大ヒットを記録した「リンダ リンダ リンダ」(05)には撮影助手として参加。現在、映画のみならず、CMやPVにも積極的に参加し、今後がもっとも期待される若手カメラマン。
 


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