プロフェッサーMのポケットe-movie教室
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ドキュメンタリーカメラマン一筋 大塚光彦さん

縦型ポケットムービー第1号GR-DV1(1995年12月発売) ビクターがGR-DV1を世界初の縦型デジタルビデオカメラとして世に送り出したのは1995年のことでした。DVフォーマットの高画質を生かしながら、ポケットに収まる小型化と多彩な機能を実現した縦型ポケットムービー第1号=GR-DV1の登場は、デジタルビデオカメラ市場全体の方向性を決定づける歴史的な出来事でした。

ここでは、記録映画やドキュメンタリー映画の世界にまで視野を広げて、縦型ムービーの歴史をひもといてみます。貴重な証言をしていただけるのは、この道四十年というベテランのドキュメンタリーカメラマン・大塚光彦さんです。


縦型カメラのルーツは

インタビュー現場に現れた大塚さんの右手には、鉛色の輝きを見せるクラッシックなムービーカメラが握られていました。

フィルモ(16mmフィルムカメラ) 「ここに持ってきたのは、フィルモと呼ばれる16mmフィルムのカメラです。フィルモの兄貴格でアイモという35mmフィルムのカメラもありました。どちらも、アメリカのベルハウエル社製で、フィルモは1923年に発売開始されています。外装とメカニズムのタフさが売り物で、ゼンマイ駆動なのですよ。そして、縦型のコンパクトなボディーですから手持ち撮影が容易です。ですから、どんなに厳しい状況でも撮影可能ということで、当初は軍事用や従軍記録用のカメラとして活躍しました。


若き日の大塚カメラマン構えているのはアイモ 第二次世界大戦後、この縦型カメラがドキュメンタリー映画やニュース映画の主役になるわけです。私が撮っていた東宝の劇場用ニュース映画『朝日ニュース』は、ほとんどがアイモで撮影されたものです。また、テレビニュースの撮影現場ではフィルモが主役でした。伊勢湾台風、60年安保、新潟地震、ロッキード事件、成田空港反対闘争などの大事故・大事件の真っ只中で、私が構えていたのは、いつもフィルモやアイモでした。報道用のカメラは機動力が命ですから小型でタフなカメラでなくてはいけませんからね。


フィルモを構える大塚さん手持ちで安定するというのも縦型カメラが報道の現場で主役になった理由でしょう。人間工学的に、実に良く考え抜かれたデザインで、構えやすくて撮りやすいんです。一方、苦労もありました。ゼンマイ駆動で一回フルに巻いても22秒しか回りませんから、ワンカット撮り終えると直ぐにゼンマイを巻き、走りながら目測でフォーカスと絞りを合わせていました。ファインダーではフォーカスも絞りも確認できないカメラだったんです」

ビクターも作っていたフィルム用縦型カメラ

大塚さんはご自身のアルバムから一枚の写真を引き出して見せてくれました。そこに写っていたのは一台のムービーカメラ。ボディに"Victor 16"の文字が読みとれます。


「1950年〜60年頃だったでしょうか。私のいたTBS報道局に、ビクター16というカメラがありました。ニュース取材で大いに活躍してくれた国産カメラの内の一台です。手持ちでの安定性や携行性がよく考えられていました。


Victor16(ビクター製の16mmフィルムカメラ)カメラの小型化・軽量化は大切です。それはプロの世界では機動力につながります。アマチュアにとってカメラの小型化は、いつでも持って歩ける携行性とイコールでしょう」


ここで大塚さんは、たまたまインタビュー現場にあったGR-DVX9を手に取りました。


「このカメラはイイですね。持ちやすくて安定して構えられます。小型のカメラにとって最も大切なことは、手持ちでの安定性なんです。いつも三脚を立てて撮るわけではないので、手持ちカメラワークでの安定性を人間工学的にも追求する姿勢が必要です。その点でビクターの縦型ムービーは評価できます」


大塚カメラマン直伝縦型ムービーの構え方

アマチュア向けのカメラでもプロが握ると感じが違う… 秘密は構え方にあるようです。早速、大塚流縦型ムービーの構え方を伝授してもらいました。


「私が考える手持ちの基本は『右手でホールド、左手でサポート』です。状況が許す限りにおいて両手でカメラを支えるべきでしょう。但し、左手にはあまり力を入れないでください。あくまでサポートですから。それから、右脇をしっかりと絞めること。これだけでカメラの安定性は大きく変わりますよ」
大塚流縦型ムービーの構え方 左手に注目

ムービーに愛をこめて

ドキュメンタリーカメラマンとして四十年のキャリアを持つ大塚さんにとって、縦型ムービーは自分の人生と切っても切れない関係にありました。フィルモを片手に提げて去る大塚さんの後ろ姿には、「まだまだ撮るぞ!」という気迫が溢れていました。


<大塚さんのプロフィール>
1935年、西宮市生まれ。1957年に日本映画新社入社。東宝の劇場用ニュース映画『朝日ニュース』を多数撮影。1966年、東京テレビ映画社(同社はTBS映画社からTBSビジョンへと発展)へ転。以来、テレビのニュース・報道番組を支えてきた。現在もフリーのカメラマンとして活躍中。大塚さんにカメラマン引退の言葉は無い。

<主な作品歴>
股関節改造術(米国医学アカデミー映画賞)、プレイボーイ日本語版CM(米国CFコンクール金賞)、東京オリンピック作戦(日本産業映画コンクール奨励賞)、未復員兵の告発(放送批評懇談会賞)など多数。

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